さて、ウルザブロック登場前に、小噺をひとつ。
当時いちばん嫌いだったカードは、適者生存でも繰り返す悪夢でも転覆でも新緑の魔力でもなく。

「呪われた巻物」

であった。
降臨すると(本体も含め)速やかなる大量虐殺が始まるこの恐怖の1マナアーティファクトは、手札を高速で消費する戦法を是とし、また「プロテクションの排除」という「最良の解答」をも含んだ画期的なカードであった。
黒い小型生物で闘う以上当然使う側であるべきなのだが、テンペストを剥いても剥いてもさっぱり出てこない。1パック400円は、ボンビーな大学生にはなかなかの出費である。さてどうしたもんか。
・・・ここで私は、今まで大して経験したことのない「第三者」との取引を試みることとなる。高校つながりでも大学つながりでもない人物との接触である。
・・・まるで未知の生物とのコンタクトのように書くが、インターネッツなんてものが雲の上の話だった当時、それはまるで手探りだったのである。

んで、接触した結果。俺はあっさり巻物をあきらめた。
当時初めて経験した「シングルカード相場」というものに落胆したのだ。それまでは身内のやりとりだったのでなぁなぁで済ませてきた「壁」にぶち当たったわけだ。当時仙台市にはカードを単品で売るなんていう(当時としては)大冒険をやる店なんてなかったし、ね。

なお、この時期に、仙台マジック民の重要人物であるサド村氏と出会う。赤バーンの強さを知ったのもその時だ。

さて、ウルザズ・サーガに話を戻そう。当時のサーガといえば?

「トレイリアのアカデミー」
「意外な授かりもの」
「時のらせん」
「天才のひらめき」

そして「精神力」。
いわゆる「ターボジーニアス」とか「MoMa」とか呼ばれていたやつだ。
だが、グランプリはおろか、DCIの公式大会すら蚊帳の外であった私は、やれウルザのガラクタだ、古の墳墓だ、果ては真鍮の都を入れてメインから紅蓮破だ、とそんな高度な情報戦なんぞほっといて、いくつかのカードに目を付けた。

まずは今も最強のカードの一翼として名高い「ヨーグモスの意志」だ。当時は当たり前の話だったが、このカードが4枚使える環境にいたわけである。それも、暗黒の儀式、ネクロポーテンスといっしょにだ。こいつぁクレイジーだぜ。
ネクロの使い方がまだ分からなくて、アドバンテージなんて単語に縁が無かった自分でも、このカードの恐ろしさは肌でなんとなく分かったというわけさ。

次に「ガイアの揺籃の地」。
これをおかしいと思わないって?HAHA、お前のデッキに不毛の大地は何枚だ?みたいな。
緑のバカ正直なビートダウンが隆盛したのは、もう少しあとの話だ。

そして3番目が「強迫」である。
このたった1マナのコモンカードが黒にもたらした恩恵は語りつくせないほど大きい。当時、1マナで手札を破壊できるカードなぞ「葬送の魔除け」しかなかったのだから。それでさえ、相手の手札をじっくり見て、もっとも致命的なものにご退場願うなどということはできなかったのである。
同じことを3マナで行わなければならなかった時代に、こいつは現れた。暗黒の儀式を温存できる。それまで「黒である」がゆえに甘んじて受けるしかなかった神の怒りやハルマゲドン、ドルイドの誓い、繰り返す悪夢を落とせてかつこれらより速い。先手を取れば、憎き巻物さえも叩き落とせる。こんなカードがあっていいのか。
今でこそ「思考囲い」や「コジレックの審問」の後塵を拝する位置になってしまったが、これらのさきがけとして果たした役割は極めて大きいのである。

こうして、俺のウルザブロックは幕を開けたのだ。
しかし以後、マスクス・ブロックが登場するまでは、大会にも出ず、師匠ポジだった同期も引退してしまったり大学に来なくなったり、大学の同好者のたまり場は(今でいうところの)副流煙がすさまじくて近寄れず、という状況だったので、いささか停滞してしまうこととなる。

・・・この頃、山形市では「イタリア語のリバイズド」が大量に売られていた。1パック333円。ドルじゃないよ?
さすがに当時はイタリア語が読めず、カードリストとかも無かったし、下の環境なんて名前しか無かったので手を出さなかったのだ。もちろん後悔しているw

さて、大してインパクトも無かった(ように当時は見えた)ウルザズ・レガシーが発売されてすぐの話。
ちょっとだけ経験しようと思って足を運んだところ。それが。

山形大学TRPG研究会「ニュートラル」。

ええ、沼です。底なし沼の入口です。
多くの同好者たちが集う場だったのだが、前述の理由により足が向かなかったところ。
そこで出会ったのは、数多くの個性的な面々と、

「パリンクロン」。

まぁそんなにマニアックなカードじゃないわけだが、このカードは「厳かなモノリス」「怨恨」「なだれ乗り」「錯乱した隠遁者」「樹上の村」などの面々を擁するこのセットのなかでもぶっちぎりで最強だったのだ。
理由はその当時のいわゆる「五版ルール」にある。いいかい?

「誘発型能力にはファスト・エフェクトで対応できない」

これだ。厳密にはそんなルールはなくて、ごく当たり前のように「そうだった」わけだが。
今風に言うと

「誘発型能力はスタックに乗らず即座に解決される」

ってことになるかな。
イマイチな人もいるだろうから説明しよう。

1.パリンクロンをキャスト。
2.カウンターありません。
3.場に出て誰彼が動けるタイミングではもう土地がアンタップしている。
4.エンドに恐怖撃ちます。
5.じゃあ手札に帰るね。
6.手札に除去ない・・・どうぞ。(1.に戻る)

つまり。通った段階でまず殺せない生物。
そして強迫では落とせない。火葬すらなかった時代、火力なんてとんでもない。デフォルトで飛んでる。同じセットに入ってた「乾燥」じゃ1点足りない。
イヤイヤ、「変異種」なんてカワイイもんだったね。
六版ルールの施行により「土地のアンタップに対応」できるようになったのでまだおとなしくなったが、それでもソーサリーではまず殺せず、ウルザブロック当時は最強のフィニッシャーだったのだ。1匹倒しても2匹めの連打にはまず対処できない。使い手が当時サークル内でも1、2を争う腕の人物だったのも、あったかもしれないな。

そんなウルザズ・レガシーだが、自軍として思い出深いのは「拷問の車輪」かな。
「拷問台」の重たい劣化版であるコイツは、しかし当時としては稀有な「呪われた巻物」対策だったのだ。2ターン目に「深淵の死霊」が登場し、巻物を嘲笑いながら手札を破壊していく。アップキープに3点ですね?

さて、ウルザズ・ディスディニーの話をしようか。
このセットはもっとも好きなセットのひとつでもあり、もっとも嫌いなセットのひとつでもある。
「ファイレクシアの抹殺者」「貪欲なネズミ」「火薬樽」が前者。「補充」「アカデミーの学長」「泥棒カササギ」「ヨーグモスの取引」「すき込み」「マスティコア」が後者だ。

抹殺者はあの赤のいない、そして青い環境によくぞいてくれたという偉大なるお方だ。1ターン目に儀式から登場し、あなたの命はあと4ターン。
ネズミはポータルからの「格上げ」収録組だ。(当時ポータルはトーナメントシーンでは一切使用できなかったため)そのシブイ仕事ぶりは、インベイジョンでも発揮されている。
火薬樽はいわゆる「スリーパー(最初は評価が低かった)」だったのだが、どーせエンチャントなんてさわれねーよ、って割り切った青や黒が使うことによって世に躍り出た。マスクス・ブロック登場後は軽量ビートへのアンチカードとして、さらに強く変貌することに。

・・・嫌いなカードについては・・・まぁ、ね。みんなコイツら嫌いでしょ?

まず頭角を現したのはマスティコアで、かの有名な赤茶単にも投入された。
これほど「再生」の2文字が重くのしかかったカードはない。最終的には、大量のマナエルフと「ガイアの揺籃の地」からひねり出された恐ろしい量の緑マナで相手の場をまっさらにしていき、「すき込み」でトップにフタをする。ハイ抹殺完了。というカードだったのだ。
なお、俺の黒単では手札破壊が強かったので、けっこう何もせずに死んでいくことも多かったナイス置き物でもある。
なおニュートラルでは、カササギで維持コストを賄いつつ殴る、という部分特化した青単が登場することになる。マスクス時代の話だ。

学長・・・バーゲン・・・補充・・・もうあんな時代は嫌だ・・・。
なお「ピットサイクル」は「手札破壊による安全確認ののちコンボする」デッキの先駆けであり、「補充」は「打ち消されないカウンターがある状態でコンボする」デッキの先駆けである。今風に言うなれば、前者がANT。後者が「ハイタイド」または「スニーク・ショウ」。ということになるかな。

さて、自分が公式に「マジック」に参入するのは、次のブロックからとなる。
「マスクス編」につづく。

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